吐き気・嘔吐
吐き気・嘔吐

「気持ち悪い」は、体からの緊急アラートです。
「ムカムカして食事が喉を通らない」「突然、激しい吐き気に襲われた」「吐いてしまったが、まだ気分が悪い」
吐き気(悪心)や嘔吐は、日常的によくある症状ですが、その原因は「軽い食あたり」から「生命に関わる重大な疾患」まで非常に幅広いため、最も診断が難しい症状の一つと言えます。「市販の吐き気止めを飲んで様子を見よう」と判断するのは危険な場合があります。当院では、消化器内科の専門医として胃腸の状態を詳しく診るのはもちろん、総合内科医の視点から「脳」や「心臓」などの病気が隠れていないか、全身をくまなくチェックします。
人間には、体に入ってきた有害なものを排出しようとする防御反応が備わっています。脳にある「嘔吐中枢」という司令塔が刺激されることで、「吐き気(オエッとなる感覚)」や「嘔吐(実際に胃の内容物を吐く)」が引き起こされます。
この司令塔が刺激されるルートは主に4つあります。
胃腸からの刺激
食べ過ぎ、ウイルス、炎症、がんによる閉塞など。
脳への直接刺激
脳出血、脳腫瘍、頭を打った時など(脳圧の亢進)。
平衡感覚の乱れ
乗り物酔い、メニエール病など耳の不調。
血液・薬・精神
薬の副作用、糖尿病の悪化、妊娠(つわり)、強いストレスや匂いなど。
このように原因が多岐にわたるため、「いつから」「どのような状況で」「他にどんな症状(頭痛や腹痛)があるか」が診断の重要なカギとなります。
私たち医師は、患者様のお話を聞きながら、頭の中で以下の可能性を整理しています。
最も多い原因です。
急性胃腸炎(ウイルス・細菌)
ノロウイルスや食中毒など。下痢や発熱を伴うことが多いです。
逆流性食道炎・胃炎
胃酸の逆流や胃粘膜の荒れにより、ムカムカが続きます。
腸閉塞(イレウス)
腸が詰まってしまい、食べ物やガスが流れなくなる病気です。便秘とともにお腹が張り、激しい嘔吐を繰り返します。緊急入院が必要な場合があります。
虫垂炎(盲腸)・胆石・膵炎
激しい腹痛とともに、強い吐き気が生じます。
胃がん・十二指腸潰瘍による
「狭窄(きょうさく)」
がんや潰瘍の瘢痕(傷跡)で胃の出口が狭くなり、食べ物が通過できずに吐いてしまうケースです。
消化器内科を受診された場合でも、私たちが常に警戒しているのがこちらです。
くも膜下出血・脳出血
「バットで殴られたような頭痛」とともに、噴水のように吐くのが特徴ですが、頭痛が軽微で吐き気だけが先行する場合もあります。
脳腫瘍
朝起きた時に吐き気が強い(早朝嘔吐)のが特徴です。
片頭痛
ズキンズキンという頭痛とともに、光や音に過敏になり吐き気を催します。
心筋梗塞
実は、心臓発作の症状として「吐き気」が出ることがあります。特に高齢者や女性では、胸痛がなく「胸焼け・吐き気」だけを訴えるケースがあり、注意が必要です。
薬剤性
抗生物質、痛み止め、ピル、抗がん剤などの副作用。
心因性嘔吐
強いストレスや緊張、不安が引き金となって起こります。
「吐き気がある」というだけで、市販薬で止めてしまうのはリスクがあります。特に以下のようなケースは、すみやかに医療機関を受診してください。
「緊急ではないけれど、なんとなくずっと気持ち悪い」という場合、胃がんやピロリ菌感染、機能性ディスペプシア(胃の動きの低下)などが疑われます。これらは血液検査や触診だけでは診断がつかず、画像検査(内視鏡やエコー)が必須となります。
原因に合わせた治療を行います。
点滴療法
脱水がひどい場合、水分と吐き気止めを点滴で直接入れます。劇的に楽になることが多いです。
内服薬
胃腸の動きを整える薬、胃酸を抑える薬、漢方薬(五苓散など)を処方します。
「吐き気止めで楽になったから終わり」ではありません。もし、吐き気の原因が「胃がんによって胃の出口が塞がりかけている」ことだったとしたらどうでしょうか?薬で無理やり吐き気を抑えても、がんは消えませんし、通過障害も治りません。
吐き気の原因が「逆流(酸)」なのか、「閉塞(がん・潰瘍)」なのか、「機能低下(動き)」なのか。これを見極めることができるのは、胃カメラだけです。
「吐き気があるのに、カメラなんて飲めない」と不安に思われるかもしれません。だからこそ、当院では鎮静剤を使用し、眠っている間に終わる内視鏡検査を行っています。嘔吐反射(オエッとなる反射)が強い方でも、鎮静剤を使えばその反射を眠らせることができるため、苦痛を感じずに検査を受けていただけます。「怖い病気ではない」と確認して安心するためにも、長引く吐き気がある方は一度ご相談ください。
控えたほうが無難です。入浴は体力を消耗しますし、温まることで血管が広がり、脳貧血を起こして吐き気が悪化することがあります。シャワーで済ませるか、症状が落ち着くまで安静にしてください。
アルコールの分解産物(アセトアルデヒド)を排出するため、水分を多く摂ることが基本です。胃薬や五苓散(漢方)も有効です。症状が強い時は点滴を行うと早く症状が改善します。ただし、あまりに激しい痛みや吐血がある場合は「マロリー・ワイス症候群(食道の裂傷)」の可能性があるため受診してください。
よくあります。胃は自律神経の影響を強く受ける臓器です。緊張や不安が続くと「心因性嘔吐」や「機能性ディスペプシア」を引き起こします。当院では、体の病気がないかを確認した上で、心身両面からのケアをご提案します。
吐き気が治まってから、水分→流動食(重湯・スープ)→お粥・うどん、と段階を踏んでください。冷たいものや脂っこいもの、柑橘系は胃を刺激するので避けましょう。
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